課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 「ここ一か月は家でも会社でもフル稼働だろ?秘書の仕事に早く慣れようと必死なのは分かる。実際に俺の仕事自体も忙しくなってきたしな。でもそれならせめて家ではのんびり過ごすようにしないと、このまま行ったらお前も昔の俺みたいに倒れるぞ。」

 「でも、私は雄一郎さんの奥さんとしても専務の秘書としても、きちんと役目を果たしたいの。あなたの事をちゃんと支えたい…」

 「美弥子はちゃんと自分の役目を果たしてるし、いつも会社でも家でも俺を支えてくれてる。」

 「そんなこと、」

 「大丈夫だ。」

 むずがる赤子をあやすように、私の背中をトントンと一定のリズムで叩く。

 「美弥子はいつも頑張ってるし、俺はいつもそんなお前に助けられてばかりだ。でもな、美弥子。お前に何かあったら、それこそ俺は生きていけないぞ。」

 背中を一定に叩くリズムが止まって、今度は背中をさすりだした。

 「家事は出来る範囲でいい。ハウスキーピングやマンションのクリーニングサービスを利用すればいいし、俺も出来ることはやる。食事だって、外食でもデリバリーでもなんでもいいんだ。」

 そう言いながら、彼は見上げている私の瞳に優しいキスを降らせる。

 「それにな、家では俺を癒すことが一番の仕事なはずだろ?」

 悪戯を企んでいる時の少年みたいな顔で瞳を輝かせた彼が、私の唇の端をすばやくかすめ取った。


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