課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 「ちっ、違います!」

 私は行動は課長にとったら突拍子もないことで、私は自分の要望を彼に押し付けているだけだということを思い出した。
 いくら部下の要望を断ることのない課長だって、こんな無茶苦茶には怒ってもしかたない。
 
 いつになく動揺した自分を落ち着かせたくて、床に着いている左腕を右手でギュッと掴んだ。

 床に着いている左手のピンクベージュのネイルが剥げかけている。
 いつも頓着しないのに、今は無性にそれが気になった。

 「うちの課に来られてから課長は、いつもデスクで山のような書類に囲まれてますが、部下の相談や申請に返事をされるくらいで、ほとんどぼんやりとしてらっしゃいますよね。でも翌日にはいつも仕事がすべて終わっているので、いつ仕事をされているのか分からなくて、不思議で仕方がありませんでした。」

 「ですが、私がほぼ毎日残業をする中で、課長が私より早く帰られた日はほとんど無いことに気付いたんです。私が帰るときにはオフィスにいらっしゃらなくても、たいてい喫煙室にいらっしゃるようでしたし。いつもご自分の仕事は定時後にされてらっしゃいますよね?」

 そこまで一気に喋ってから、恐る恐る課長へと視線を上げた。
 すると、そこには片手で顔を覆って俯いている課長が。 
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