課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 耳が真っ赤…

 思わず「課長?」と声をかけると

 「くそっ、気付いてたか…」

 顔を背けたままの彼がそう言うのが耳に入った。

 「柴原はホント良く見てるよな。」

 まだほんのりと赤みの顔を上げた課長は、ガシガシと頭をかいた。

 「毎日一緒に仕事をしていれば分かりますよ?」

 「いや、課の他の奴で気付いてるやつはあんまりいないぞ。特に女性社員ではな。」

 「そうですか。」

 確かに若い後輩女子たちは課長の仕事なんて気にもしていなさそうね。

 そう思ったが敢えて口にはしない。

 「でもそれだけじゃありません。課長はこの三年間、部下に向かって声を荒げているのを見たことがありません。そしてどんな要望も否定することはありません。」
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