課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 そんな私の両手首を握ってソファーに押し付けた課長は、これでもか、というくらい私の耳を弄んだ。
 噛まれ、舐められ、吸われ、ありとあらゆる方法で私の耳を味わい尽くす。

 「や、ダメ…あ、やぁっ」

 甘い痺れが体を駆け巡る。
 
 これまで感じたことのない感覚に身を捩らせて抵抗しようとした。でも、両手を押さえつけられ、足も課長の両足に挟まれて抜け出すことができない。
 堪えきれずに漏れ出てしまう声が恥ずかしくて堪らない。
 時には「もうやめて下さい」と懇願したけれど、彼は少しも意に反さない。
 息も絶え絶えになりぐったりと力が抜けきったところで、「ちゅっ」と耳朶に口づけてやっと私のそれを口から放した。

 彼は生理的な涙を浮かべた私を見てペロリ、と自分の唇を舌で拭ってから、目を細めて「ごちそうさん。」と言いった。
 そして私の上から起き上がり、私の両手首を引っ張ってソファーに座らせる。
 まだ力が抜けきったままの私は課長にされるがままだ。
 彼は私の頭を自分の胸にもたれさせ、右腕を私の背中に回して腰を引き寄せた。

 トク、トク、トク、

 彼の鼓動が直接耳に響く。
 さっきまでの激しさと打って変った穏やかさが心地良い。
 課長の大きな手が私の頭をゆっくりと撫でる。
 猛スピードで動いていた心臓が元のリズムに戻り、火傷しそうなくらい熱かった体もが徐々に静まってくる。

 自然と瞼を閉じた。
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