課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 …………。

 待ってみたけれど、課長は黙ったまま。
 どうしても気になって顔を上げた途端、唇に柔らかいものを感じた。

 そっと優しい触れるだけのキス。

 ゆっくりと唇を放した課長に私の瞳はくぎづけになった。
 彼は今まで見たことがないほど甘くて蕩けそうな瞳で微笑んでいる。

 「それは自分で考えるんだな。」

 優しい微笑みから一変して、今度はからかうようにニヤリと笑ってから、彼は私の頭をポンポンと叩いて立ち上がった。

 「じゃ、俺も風呂入ってくるわ。時間も遅いし先に寝てろな。寝室は出て右のドアだ。」

 そう言って、さっさとリビングから出て行った。
 
 「自分で、って…。」

 取り残されて途方に暮れる。

 『信頼』は分かる。

 でもあと一つは…


 課長の出した『宿題』に頭を悩ませているうちに、気付いたら意識を手放していた。
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