課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 【雄一郎side】

 湯上りの美弥子にやられたな…。

 シャワーを頭から浴びながら心の中でぼやいてみる。熱めのお湯が逆上せた頭を冷やしてくれる。

 風呂から戻ってきた美弥子は、白い肌に朱をほんのり刷いていた。
 湯船で温まったからか頬が薄桃色に上気していて、それだけで色っぽい。
 いつもはあるはずの眼鏡が無いせいか、彼女の瞳が潤んでいるのがよく分かった。

 それだけなら俺も何とか理性をたもったんだけどな…
 
 極め付けは、俺のスエットの上だけをすっぽりと被ったその姿だ。
 
 下も一緒に置いておいたのだが、彼女には大きすぎたのか、事もあろうに上の服だけを羽織って出てきた。
 確かに裾が膝上のそれは普通のワンピースの長さだろう。
 しかし、自分の服の裾から覗く白くほっそりとした脚が、思ったより何倍も艶めかしくて煽情的だった。
 
 自分の服を着た彼女がこんなに男の欲望を煽るものだとは…。
 分かってやってるのか!?

 一瞬罠かと疑ったが、美弥子に限ってそんなことはないだろう、と思い直した。
 俺は、自分でそうと知らずに掘った穴に自ら落ちたような気がして、自虐的な気分になる。
 
 一度は自制心をフル動員して、持ちこたえようと思ったが、天然小悪魔のカウンターを食らって、敢え無く理性の糸が切れることとなった。

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