課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
―――美弥子はもう寝ただろう。
バスルームから出て、そう思いつつリビングに戻る。
今夜は理性をフル動員、だな。
「は~~、」と長い息を吐いた。
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出して、キャップを捻りながらソファーまで来ると
「美弥子…」
そこにはソファーの肘掛けに頭を置き、少し体を丸めてすやすやと眠る彼女の姿があった。
その寝顔はあどけない。
しばらく彼女の寝顔を眺めていると、彼女が少し辛そうに眉を寄せた。
「何か嫌な夢でも見ているのか?」
彼女を起こさないように気を付けながらそっと近付くと、いつものように髪を後ろで括っているのに気付いた。
寝る時まで括ってたら痛そうだな、と思って彼女の髪をほどくと、艶やかな黒髪がパサリと広がった。
顔に掛かった髪を指先で除けてやる。すると閉じた瞼の下にうっすらと隈が出来ているのに気付いた。
「毎日残業ばっかりして疲れてるんだな…」
頭をそっと撫でてから彼女を抱き上げ、そのままリビングを出て寝室へと向かった。