課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
長い夢を見ていた。
薄墨を撒いたような濃淡の灰色の世界を一人歩いている。
風が冷たくて手足が冷たい。
時々誰かとすれ違うから、「ここは何処なのか」問うけれど、誰一人として言葉を返してくれない。
「お前なんて存在しない」そう言われているように。
寂しい。心細い。
―――だれか私をここから出して。
そう思った時、体がフワリと浮いた。
大きくて温かい何かに包まれて、私は灰色の世界から抜け出した。