課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
6. 朝陽の中で
―――あたたかい
体が温かいものに包まれている。
閉じた瞼の向こうに光を感じて夜が明けていることを知る。
―――このままずっとこの温かさにくるまれていたい。
朝の陽射しが覚醒を促しているけれど、この微睡の中にいたくて私は瞼を開けずに寝返りを打った。
すると「トン」と何か固いものに当たる。
なにかしら…
それを確認しようとゆっくりと瞼を開けた。
「!!」
思わず口から出そうになった叫びをグッと堪えた。
目前には課長の胸板がある。彼の両腕は私の下と上にあって、私は完全に彼に挟まれた状態だ。
わ、私…課長と寝てるの!?
思いがけない事態に体が硬くなるけど、まだぐっすりと眠っている彼を起こすのが忍びなくて、しばらくそのままでいることにした。
くっついている彼の胸から聞こえるリズムが私の緊張を少しずつほどいてゆく。
昨日から課長の心臓の音ばかり聞いてる気がするわ…
でも眠っている今なら安全しら…。
予想外に「肉食」な課長の実態を知ってしまったので「今は襲われることもない」と思うと、なんとなく可笑しくなって小さく「クスリ」と笑ってしまう。
少し余裕の出てきた私は、課長の胸から少し隙間を作って、彼の寝顔を見ようと顔を上げた。