課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 「はぁ~~~。」

 ハンドルに両腕をもたれさせていた雄一郎さんはそのままそこに突っ伏した。

 とうとう呆れさせてしまった…
 
 経験不足で、こういう時にどうして良いのか見当もつかない自分が情けなくなる。

 「ごめんなさい。」

 小さく謝ると、彼はハンドルに伏せていた顔を少し私の方に向けて、不思議そうに聞いてきた。

 「どうした?なんで謝ってる?」

 「私…これまでこういう経験を積んで来なかったから、雄一郎さんがどうして呆れてるのか、どうしたら良いのか、全然分からなくって…。」

 「美弥子…。」

 「何を直したらいいのか、全然分からないの…だから。」
 
 膝の上で握った自分の拳を見つめる。目が潤んでいるのが分かるから、瞬きを堪えた。

 
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