課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
2. 柴原美弥子の事情
会社を出てから、無言で歩く課長に習い私も黙って着いて行った。
初冬の夜は、もうかなり寒い。
十分ほど歩いただろうか、辿り着いたのは高級そうなタワーマンション。課長は迷うことなくそこへ入って行った。
私は何となく足を止めてタワーマンションを見上げた。近過ぎて上のほうが良く見えない。
課長はエントランスに入ったところで私が立ち止まっているのに気が付いて
「何してる。ほら行くぞ。」
と私を呼んだ。
やってきたエレベーターに二人で乗り込むと、彼は【38】のボタンを押す。
グングンと上昇していく感覚に思わず身を竦める。
なんだか異世界にでも連れられる気分だわ…
そう思っていると、
「いかがわしいところにでも連れていかれるかと思ったか?」
と近いようでいて見当はずれな言葉が頭上から落ちてきた。
思わず課長を振り仰ぐと、「くくくっ」と肩を震わせて笑っている。
「ま、あんまり変わりはないかもしれんがな。」
彼のその小さな台詞を、「ポン」というエレベーターの音がかき消した。
初冬の夜は、もうかなり寒い。
十分ほど歩いただろうか、辿り着いたのは高級そうなタワーマンション。課長は迷うことなくそこへ入って行った。
私は何となく足を止めてタワーマンションを見上げた。近過ぎて上のほうが良く見えない。
課長はエントランスに入ったところで私が立ち止まっているのに気が付いて
「何してる。ほら行くぞ。」
と私を呼んだ。
やってきたエレベーターに二人で乗り込むと、彼は【38】のボタンを押す。
グングンと上昇していく感覚に思わず身を竦める。
なんだか異世界にでも連れられる気分だわ…
そう思っていると、
「いかがわしいところにでも連れていかれるかと思ったか?」
と近いようでいて見当はずれな言葉が頭上から落ちてきた。
思わず課長を振り仰ぐと、「くくくっ」と肩を震わせて笑っている。
「ま、あんまり変わりはないかもしれんがな。」
彼のその小さな台詞を、「ポン」というエレベーターの音がかき消した。