課長、サインを下さい！～溺愛申請書の受理をお願いします。

　エレベーターの外の廊下には綺麗な深緑色の絨毯が敷き詰められている。
　一歩踏み出した途端、フワッとした柔らかさにいつもより高いヒールの足が取られる。

　少しよろついた私の腰をすかさず支えた雄一郎さんは、そのまま私をエスコートするように廊下を進む。
　その危なげない足取りに、私は身を任せるようについて歩いた。

　一番奥の部屋で彼は足を止めた。

　【副社長室】

　高級感漂う重厚な造りの扉にはそう書いたプレートが。

　まさか、ここに！？と、思わず雄一郎さんを振り仰いだと同時に、彼はその扉を躊躇なくノックした。

　「雄一郎さん、」

　問いかけようとする私のことも、ノックの返事も待つことなく、彼は目の前の扉をゆっくりと押した。