課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 出された缶ビールをチビチビと飲みながら、夜景を眺める。
 
 ああ、最高だわ。

 ビールと夜景の組み合わせにうっとりとする。

 それにしても、課長は私のアルコールの好みを知っていたのかしら。

 結構お酒が好きな私は、アルコールはなんでも飲めるのだけど甘い酎ハイやカクテルはほとんどと言っていいほど飲まない。
 数少ない課の飲み会でも、ほとんどビールかハイボールを飲んでいる。
 
 私、見られてた?
 いえ、ただ単にここには甘いお酒が無かっただけよね。

 と独りごちる。

 私が彼のことを見ていたようには、きっと彼の方は私のこと何て見ていないだろう。
 同じ職場の上司と部下。
 それをくずしたことなんて今まで無かったし、それ以前に業務以外の会話をした記憶もない。

 『地味なお局OLと課のまとめ役』

 そんな表現がぴったりな私たちだ。

 今こんなところでこんな風にしている自分なんて、一週間前には想像つかなかった。

 事の発端は、伯母からの電話だった。




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