課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 「おっさんのヤキモチは見苦しいよ、雄兄さん。」

 「うるさいっ。」

 「美弥子ちゃん。こんな嫉妬深いおっさんのことはやめにして、俺にしない?」
 
 雄一郎さんの体を避けながら副社長が私の顔を覗き込む。

 「やめろっ、美弥子に近寄るなよ!そして勝手にちゃん付けで呼ぶな!!」

 後ろ手に雄一郎さんが背中に私を抱き寄せる。

 本当の兄弟のような暢気な二人の掛け合いを目の前にして、私の中に何かがプツリ、と切れた。

 「雄一郎さん。」

 地を這う様な私の声に、彼の体がギクッとするのが伝わってくる。

 「な、なんだ?美弥子?」

 「私に言ってないことがあるんじゃないですか…。」
 
 私の方に向き直ってた雄一郎さんだけど、その目は泳いでいる。

 「きちんと説明していただくまで、私、雄一郎さんのマンションへ帰りませんから。」

 彼をまっすぐ見つめてキッパリと宣言した。

 「そ、それは勘弁して。ちゃんと説明するから…。」

 雄一郎さんは眉と目を下げて心底「まいった」という感じだ。

 「あははははっ。」

 横で見ていた副社長が大きな声で笑う声が室内に響く。
 彼は目じりに溜まった涙を拭いながら

 「くっくっくっ、、、雄兄さんのそんな姿、初めてみたよ。ああ、美弥子ちゃん、雄兄さんのところに帰らないなら俺の所においでよ。」

 「幸誠!!」

 副社長は「面白すぎる!」と言ってまた笑った。





 
 
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