君にもう一度会うために。
その日の夜。
夢を見た。

思いでの場所に向かう俺。
そこには彼女が居て、とても切ない笑顔をしていた。

大好きだったあの笑顔ではない彼女が居た。

戸惑う俺の手を握り、彼女は言った。



「いつまでそんな顔しているの?」

その声は寂しげで。
俺のことなんて見透かしてしまっているような。

潤んだ瞳をしていた。

声を掛けようとした瞬間に彼女は話し続けた。

「明日デートしよ!場所と時間はいつ通りで。」

そういって彼女は光にむかって走り出した。

まって!!!

俺は光を掴むように手を伸ばした。

ふと立ち止まり。
彼女は振り返り。

「思い出をもう一度。」

そういって消えてしまった。

俺ははっとして飛び起きた。
時計に目をやると午前9時半。

一瞬やばいと思った。このままでは遅刻してしまう。
またやってしまった。

俺は焦りながら着替えをする。
けれどふと我に戻る。

そうだ。
あいつはもう。

ブ-ブ-・・・。

ふと携帯のバイブ音が響いた。
< 8 / 9 >

この作品をシェア

pagetop