国王陛下の庇護欲を煽ったら、愛され王妃になりました
ノエリアは状況が飲み込めなかった。どういうことだろうか。首をかしげるノエリアに近寄ってきて、シエルは言った。
「休暇を取ったので、ここにしばらく滞在する」
「はい?」
休暇で滞在と聞いて、言葉をうまく頭が理解してくれなかった。
「はい? って、手紙を出しただろう。休暇を取るのも苦労したんだ」
「読んでいませ……あ」
おそらく、ヴィリヨは知っていたのだ。ノエリアが引きこもっていたから悪いのだけれど。ぼんやりして部屋に引きこもる妹にショック療法だろうか。そのとき、ダイニングのドアがノックされた。
「リウです」
「入れ」
リウの声にシエルが答える。ブラウンの髪、明るい笑顔のリウがダイニングへ入ってきた。なんだか懐かしい。あの日、もういられないからすぐに帰りたいと無理を言ったのに、馬車を手配してくれたのはリウだった。
「リウ様!」
「ノエリア殿。お元気でしたか?」
リウはノエリアの手を取りにっこり微笑んだ。
「おや。少し痩せましたね」
言われてノエリアは苦笑した。
「晩餐会では、ご迷惑をおかけしました。申し訳ございません……」
「なにも。ノエリア殿を追いかけて陛下が泣きながら王宮を脱走しようとしたことに比べたら可愛いものです」
「リウ。余計なことを……。それに俺は泣いていない」
「おや、そうでしたか」
シエルが口を尖らせた。
「陛下は悪くありませんので……その、本当にお騒がせしました。もう大丈夫ですので」
「大丈夫だとは思えませんが。ノエリア殿?」
リウの返事に、ノエリアは顔をあげる。腕組みをし、シエルとノエリアを交互に見て、リウは溜息をついた。
「まったく。陛下もノエリア殿も、素直になったらどうですか。もう嫌です。面倒見切れません。俺はもうマリエ殿が焼いてくださったケーキと王都から持ってきた焼菓子でヴィリヨ殿とお茶をします。もう決めました」
一気に言うと、ダイニングのドアを開けた。マリエが通りかかったので、ヴィリヨに声をかけてくれと頼んでいる。
「どうぞおふたりでお過ごしください。邪魔しませんから。あ、マリエ殿。ノエリア殿のお部屋にお茶をお願いしていいかな~」
マリエに指示を出しながら、出て行ってしまった。
ダイニングに取り残されたふたりを、沈黙が包む。ただ、重い沈黙ではなかった。リウの言うとおりに、部屋で話をしよう。ヴィリヨだって、この機会を作ってくれたのだ。
「わたしの部屋、行きましょうか」
ふたりはノエリアの部屋へ移動した。マリエの仕事の速さに驚くのだが、もうティーセットが乗ったワゴンが用意されていた。
「マリエ、ケーキを焼いてくれていたのですね」
「ジャムケーキだな」
林檎と苺のジャムを使っており、赤と黄色で美しい。とても美味しそうだ。
「この焼菓子は……」
「ここへ来るのに王都の店で買ってきた」
「シエル様が、ですか?」
「そうだ。どうかしたのか?」
ノエリアはふっと笑ってしまった。だって、ワゴンの上に焼菓子が山ほど積んであったから。
「一週間いるんだから、これぐらい食べるだろう?」
「そういうことですか?」
クスクスと笑いながら、お茶をカップに注ぎ、ケーキと焼菓子を準備した。ノエリアは、テーブルに寛ぎの時間を設けているようで嬉しかった。
シエルとのティータイムは、穏やかで嬉しくて、ずっとこうしていたいと思わせる。ノエリアは、久しぶりに心が満たされる感じがした。
「休暇を取ったので、ここにしばらく滞在する」
「はい?」
休暇で滞在と聞いて、言葉をうまく頭が理解してくれなかった。
「はい? って、手紙を出しただろう。休暇を取るのも苦労したんだ」
「読んでいませ……あ」
おそらく、ヴィリヨは知っていたのだ。ノエリアが引きこもっていたから悪いのだけれど。ぼんやりして部屋に引きこもる妹にショック療法だろうか。そのとき、ダイニングのドアがノックされた。
「リウです」
「入れ」
リウの声にシエルが答える。ブラウンの髪、明るい笑顔のリウがダイニングへ入ってきた。なんだか懐かしい。あの日、もういられないからすぐに帰りたいと無理を言ったのに、馬車を手配してくれたのはリウだった。
「リウ様!」
「ノエリア殿。お元気でしたか?」
リウはノエリアの手を取りにっこり微笑んだ。
「おや。少し痩せましたね」
言われてノエリアは苦笑した。
「晩餐会では、ご迷惑をおかけしました。申し訳ございません……」
「なにも。ノエリア殿を追いかけて陛下が泣きながら王宮を脱走しようとしたことに比べたら可愛いものです」
「リウ。余計なことを……。それに俺は泣いていない」
「おや、そうでしたか」
シエルが口を尖らせた。
「陛下は悪くありませんので……その、本当にお騒がせしました。もう大丈夫ですので」
「大丈夫だとは思えませんが。ノエリア殿?」
リウの返事に、ノエリアは顔をあげる。腕組みをし、シエルとノエリアを交互に見て、リウは溜息をついた。
「まったく。陛下もノエリア殿も、素直になったらどうですか。もう嫌です。面倒見切れません。俺はもうマリエ殿が焼いてくださったケーキと王都から持ってきた焼菓子でヴィリヨ殿とお茶をします。もう決めました」
一気に言うと、ダイニングのドアを開けた。マリエが通りかかったので、ヴィリヨに声をかけてくれと頼んでいる。
「どうぞおふたりでお過ごしください。邪魔しませんから。あ、マリエ殿。ノエリア殿のお部屋にお茶をお願いしていいかな~」
マリエに指示を出しながら、出て行ってしまった。
ダイニングに取り残されたふたりを、沈黙が包む。ただ、重い沈黙ではなかった。リウの言うとおりに、部屋で話をしよう。ヴィリヨだって、この機会を作ってくれたのだ。
「わたしの部屋、行きましょうか」
ふたりはノエリアの部屋へ移動した。マリエの仕事の速さに驚くのだが、もうティーセットが乗ったワゴンが用意されていた。
「マリエ、ケーキを焼いてくれていたのですね」
「ジャムケーキだな」
林檎と苺のジャムを使っており、赤と黄色で美しい。とても美味しそうだ。
「この焼菓子は……」
「ここへ来るのに王都の店で買ってきた」
「シエル様が、ですか?」
「そうだ。どうかしたのか?」
ノエリアはふっと笑ってしまった。だって、ワゴンの上に焼菓子が山ほど積んであったから。
「一週間いるんだから、これぐらい食べるだろう?」
「そういうことですか?」
クスクスと笑いながら、お茶をカップに注ぎ、ケーキと焼菓子を準備した。ノエリアは、テーブルに寛ぎの時間を設けているようで嬉しかった。
シエルとのティータイムは、穏やかで嬉しくて、ずっとこうしていたいと思わせる。ノエリアは、久しぶりに心が満たされる感じがした。