脱出可能枠は一つだけ
飛翔が敏感に反応した

飛翔は聴力がいい。人一倍ね。

なので、誰よりも早くに気づき、そのリーダーシップ性からなる情報処理能力で的確な指示を出した

「逃げるぞ!」

飛翔が校庭の中心に向かって走り出した。多分、足音の反対側に逃げたんだろう

あたしたちは、飛翔に続いて走り出した

ただ、あたしは聖歌の手を取って

「え?ゆ、結月ちゃん・・・・・・?」

「聖歌、走るよ!あたしについてきてね!」

「あ、う、うんっ」

美結、美月は足は速いほうだ

でも、聖歌の50m走は九秒台だと聞いている。つまり、このメンバーの中で一番足が遅い

だから、あたしがなるべく引っ張ってあげなきゃ追いつかれる。

この中で一番速いしね?ふふん

タッタッタッタッ・・・・・・・ダダダダダッ!!!

「っ、速くなった?!」

陽介が小さく叫ぶ

夜なので、後ろをちらりと見ても、人影だけが見えて、性別や顔ばかりは見えないな・・・・・・

ただ、この鬼

小さな子供にしては速すぎる!なんで?!

「結月、ちゃんと前向いて」

「ふえ?み、美月・・・・・・?」

あたしの横を走っているであろう美月から喋りかけられる

かなり、美月も息が切れているみたい

「聖歌がいるんでしょ?ちゃんと走って」

「え、あ、うん」

正論を言われてしゅんとする

おっと、ちゃんと走らなきゃ

あたしは聖歌の手を握る右手を握り直し、みんなと共に走りきった




「はあ・・・・・・はあっ」

「ど、どうにか逃げきれたわ・・・・・・」

「ちっ・・・・・・早すぎだっつーの」

体育館の鍵が何故か開いていたので、体育館に駆け込み鍵をかけた

体育館はグラウンドの敷地の一部を使って造られているから、助かった

ん?助かった?

「こ、これだっ!」

体育館の床に仰向けに倒れていたあたしが急に起き上がったので、周りのみんなは驚く

「ど、どうしたの?」

「これだよ、これ・・・・・・」
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