脱出可能枠は一つだけ
「これ?」

「うん。そう」

美結が不思議そうに聞いてくる

「なにがこれ、だよ」

飛翔も怪訝そうにあたしを見つめた

夜目がきいてきたのでよく分かる。この影は飛翔だ

「あたしたちは、今"捕まりたくない"から逃げたよね?」

「そ、そーだけど」

「そして、体育館に駆け込んで"助かった"と感じた・・・・・・」

あたしの言葉に、ハッとしたように全員が息を呑むのがわかった

「つまり、助けなきゃいけないのは────」

「ここにいる、鬼からクラスメイトを・・・・・・生徒を助けろってこと?」

「多分、ね」

沈黙が再び流れる

自分の身を挺して、生徒を、他人を助ける

まさに、"狂った"ゲームそのもののような気がした





星空の下に出たあたしちは、逃げない

今から、助けなきゃいけないのだから

鬼に捕まりそうな、一年と半年にも満たない年月を共にした、クラスメイトを





ザザザッ!

「ひいっ!」

「た、助けて!」

見つけた!

「行くよ!」

あたしの掛け声とともに、その"助けて"という言葉が聞こえた場所に向かう

そこは、裏門のすぐ側

もしかしたら、脱出を試みたのかもしれないけど、そこで鬼に見つかったんだ

でも、今からあたしたち6人はそのふたりを助ける

パンパン!

走りながら、あたしは手を叩いた

その音に気づいた鬼は、ゆっくりとあたしの方を向く

ショートカットの、小さなワンピースを着た女の子

気づいた・・・・・・!
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