脱出可能枠は一つだけ
「きゃあぁぁぁ!」

聖歌が、悲鳴を漏らし、直後に口を抑えた。

あたしははっとして、固まる聖歌の体をぐるっと反転させる。これで、あの二人の無残な姿は見えない

美月も、言葉を失っていた

「きゃはは」

「あはははは!」

きゃらきゃらとした笑い声を美結や飛翔に浴びせながら、鬼はどんどんナイフを入れていく

鮮血が飛び散り、辺り一帯が血の海になった

二人の体は既に原型を留めておらず、顔なんて、今までの二人かと錯覚してしまうほどだ

ようやく気が済んだのか、鬼は同時に手を止めた

そして、彼らの死体を無残にも蹴飛ばす

ゴロゴロと肉片が転がり、二人の体の一部が混じりあった

もう、どれが美結ので、どれが飛翔のものだったのか分からない

そしてなんの気まぐれか、女の子は自分が着ている洋服を脱ぎ捨てた

何故か、血のついていないアスファルトの上に

そして、背中の方の生地だけをナイフで切り抜き

ナイフの峰の方で、何かを描き

一番近くにいた、あたしに投げつけた

「え・・・・・・?」

何より驚いたのは、彼らからの贈り物・・・・・・ではない

彼らが、襲ってこなかったこと

そして、なぜ洋服を脱ぎ捨て、切り抜いたのか

もう、これからは使えないようになるのに

「・・・・・・懐中電灯で、彼らの顔を照らしなさい!」

美月が叫んだ

彼らの・・・・・・鬼の顔?

あたしは、持っていた懐中電灯で彼らの顔を照らした

「う、そ・・・・・・」

泣いていた

彼らは、泣いていたのだ

「・・・・・・ふふ」

なのにも関わらず、二人の子供は笑いながら消えていった・・・・・・
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