脱出可能枠は一つだけ



「っう・・・・・・」

「聖歌、大丈夫?」

「う、うん・・・・・・」

まだ吐き気の収まらない聖歌を気にしつつ

あたしは、あたしの前に投げ捨てられた生地を拾い上げた

なぜ、彼らはこんなことをしたんだろう

もう、服が使えなくなるにも関わらず、なんの躊躇いもなく服を脱ぎ切り裂いた

結果、女の子は下着姿で消えていったのだけれどね

文字は、裏側に書かれていた

赤い、血で

"終わらせて"と

「終わらせて?」

「・・・・・・」

あたしは呟く。美月は依然無言のまま、何かを考え込むように顎に手を当てている

なんか、探偵みたいだな・・・・・・・なんて思いながら、生地に再び視線を落とす

・・・・・・・・・・・・・・・・ん?

そう言えば、彼らの見かけは幼稚園児くらいだ。いって小学校低学年

なのに、"終"の字を書くことが出来る?

「ふぅ・・・・・・治った・・・・・・」

回復したらしい聖歌が、あたしの方に向き直る

「結月ちゃん、どうしたの?」

打って変わって、少し笑顔を見せながら、あたしの手の中にある生地を肩越しに除いてくる

「終わらせて・・・・・・?」

文字を口に出して読む聖歌は、こてんと首をかしげた。

うん、その気持ち、よくわかる。

「ひとまず、ここから離れましょう」

「だ、だね・・・・・・」

あたしはちらっと、視界の隅に入る"塊"を見た

血にまみれ、ところどころ紅く染まった服の破片が張り付いている

その時のことを思い出さないように、そっとあたしは視線をずらした

ごめんなさい

あたしは、あなた達を助けることな出来なかった

許して・・・・・・

「ごめんね・・・・・・」

去り際に、あたしはそう

彼らに言い残した
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