脱出可能枠は一つだけ
残りの人たち
『残りの人数は六人です。鈴木拓海、古野聖夜、小野聖歌、湖山愛佳、羽田美月、羽田結月』

今、生き残っている人たちの名前が読み上げられた

もう、これだけしかいないんだ・・・・・・皆、逃走のミッションで捕まったのかな・・・・・・?

そして、この中で生き残れるのは、一人

あたし一人だけ生き残るなら、皆で捕まった方が良いかもしれない・・・・・・

『六人の皆さんは、体育館にお集まり下さい』

スピーカーからそう流れ、プツンと途切れた

体育館と聞いて、あたしたちの顔は強ばる

体育館には、一人鬼がいるはずだ

それを知って、指定したのかな?

「行きましょう。何があろうと、行かなくちゃ失格になるかもしれない」

美月は椅子から立ち上がり、懐中電灯を手に持って教室の扉を開けた

そっか・・・・・・そうだよね

「行こ」

聖歌に促して、あたしたち三人は体育館へと向かった






電気のついた明るい体育館には、鬼はいなかった

その代わりに、三人───聖夜、拓海、そして愛佳が校舎側の入口の壁に寄りかかって座っていた

「愛佳・・・・・・?」

中に入ってみると、愛佳が泣いていた

あの愛佳が、ほんの数時間のうちに二度も泣くなんて・・・・・・

「愛佳ちゃん、どうしたの?」

愛佳が座っている前に聖歌が腰を下ろし、優しく聞いた

「檸檬が・・・・・・あたしを、庇って・・・・・・っ」

ああ、そうか

何となくわかったよ

檸檬は、愛佳を庇って鬼に捕まったんだね?

そのことを、泣いてるんだね・・・・・・

「大丈夫、大丈夫だよ・・・・・・」

聖歌はずっと、優しく愛佳の頭を撫でていた

それでも、体育館にはしばらく

愛佳の泣き声が響いていた・・・・・・
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