脱出可能枠は一つだけ
誰もいない・・・・・・と思ったけど、いた

一人、先生が

確か・・・・・・歴史担当の葉山先生だっけ?

「羽田さん?どうしたんだい?」

机に座って作業をしていた先生が顔を上げ、美月を見た

「教室に忘れ物をしたので取りにきて。暫くの間、教室をお借りしたいのですが」

上手い、言葉の使い方!

暫くの間、教室を借りたいってさ

「ああ、いいよ。えーと、二年A組の鍵は・・・・・・」

先生は立ち上がって、扉の近くにある全ての鍵を置いてある棚に移動した

「あったあった。これだよ」

はい、と言って、先生は扉から顔を覗かせている美月の手に鍵を乗せた

「ありがとうございます」

よし、教室の使用許可も一応取れたでしょ?(←これ、ただの屁理屈)

「失礼しました」

教員室の扉を閉めて、急いで教室に向かう

教員室から一番遠いんだ、A組

渡り廊下を二つ通り抜け、階段を上る

教室につく頃には、流石のあたしも軽く息が切れた

「ぜぇ・・・・・・ぜぇ」

「疲れたー」

「なんでそんなに元気なのよ」

「そういう美月も元気じゃん」

「そうでもない。開けるわよ」

鍵を開けて、リュックサックを自分の机にかけた

こうすることで、ただ単に「忘れた」と思わせることが出来る

それに、学校指定のリュックサックではないので、体操服や部活着を入れるものと思われるだろう

そう思われると、ちょっと不潔な生徒って思われるかもね・・・・・・
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