Home * Love 〜始まりは、キス〜



梅田さんは、耳に残る
低くて…優しい声で
絵本を読み始めた。


私とたろちゃんと多実ちゃんは
幼稚園の丸い椅子に座りながら
そのお話を聞く。


お話の中で心の中に響いた言葉が
あったんだ。

『もう、会えないけど…
僕はいつでも遠くから君の幸せを思っているよ。』



絵本の中のヒーローのくまさんが

うさぎのお姫様にいった言葉。


悪い人に囚われてしまったお姫様。

それを
ヒーローのくまさんに助けたのだ



そして、お姫様が言った。

『もう、会えないのですか?』
と。


そして、くまさんが答えた。

『もう、会えないけど…
僕はいつでも遠くから君の幸せを思っているよ。』


この言葉が胸に響いた。



━━━何故か梅田さんは
最後まで絵本を読んでは
くれなくて。


途中で絵本を閉じてしまった。

「もうこんな時間だ………」


「梅田さん、絵本読んでくれて
ありがとうございます。


私が向こうにいっても―――」


「良い話だっただろ?」


梅田さんは私の言葉を遮って、そう言った。



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