Home * Love 〜始まりは、キス〜
『そうなの……貴也さん、挨拶の練習何回もしたのにね。』
そう言って、
眉を下げて微笑む由夏。
『ホントだよ…。まさかあんな…何も考えてなさそうな女が隣人だとはね。』
一人言のようにボソッと呟く。
『………女?』
彼女の顔は一瞬にして曇ったように見えた。
『気になる?』
『…………』
彼女は何も言わず、ただ、俺の胸にしがみつくようにしていた。
震える肩を両手で包み込むようにした………
『気にすんなよ?俺には…由夏だけだし。』
『………好きよ?』
そう呟いて、起き上がった彼女は俺に何かに握らせたんだ。
『何…これ…』
『後で…聞いてみて。だって……私の声聞けなくて寂しいでしょう?』
『後で聞いてみるよ。』
俺はそのメモリーカードを見つめた。
その時。
『ママ゙〜〜〜〜』
と泣きじゃくる子どもの鳴き声が聞こえてきて―――
その声がする方に振り返る………