Home * Love 〜始まりは、キス〜
━━━ 貴也 目線 ━━━
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季節は変わり、梅雨。
ジトジトとした雨が何日も降り続いている6月の始め。
今日は、珍しく雨が降っていない…そんな日だった。
だけど、空は怪しい雲が渦巻いている。
【質問です…あなたが愛している人は誰ですか―――?】
ふと、考えてしまう。
由夏がICレコーダーに録音した質問の意味を。
【貴也さん…あのね?私、 寂しい…】
そうだ。
あの時、俺はこの言葉を聞いて部屋を飛び出したんだ。
会いに行こうとした。
だけど、ダメだった。
現実ってこんなものだ。
やっぱり
イギリスは遠すぎるって―――
『私…ロンドンに留学するわ………』
あと………1年、か。
由夏、早く戻って来いよ。
俺はそんな事を思いながら、自宅のソファーに横になっていた。
すると…
ポツ…、ポツ…と聞こえてきた雨音。
俺はベランダを見る。
手すりには水玉模様の水滴。
“今日も雨かよ………”
いつもは眩し
オレンジ色の夕日が
厚い雲に覆われて、優しい光になっている。
ガラガラガラ………
俺はベランダに出た。
「たろちゃん、どうしよう…洗濯物濡れちゃうよ。」
「鈴が起きないのが悪いんだっ!」