御曹司くんに再会したら溺愛されました

私たちの関係は、8年前に始まった。

私、野原里奈(のはら りな)は、大学を卒業すると同時に、小売業最大手の1つのこの会社に就職した。

2週間の研修期間を経て、営業企画部情報課に配属され、慣れないながらも一生懸命仕事を覚えようとしていた。

「野原さん、大丈夫?
何か分からない事があったら、いつでも
聞いてね。」

私を気にかけ、いつも声を掛けてくれたのが、直属の上司の佐々木京介(ささき きょうすけ)係長だった。

佐々木係長は、私より8歳年上の30歳。
背が高く、彫りの深い端正な顔立ちは、私には大人の色気を纏っているように見え、それだけで私の心を奪った。

そんな彼が、毎日のように私の側に来て、励まし、声を掛け、時折、肩や頭に手を置いて去って行くと、私の鼓動が心臓の場所をこれでもかという程、主張した。

学生の頃、私は、何人かに告白され、数人と付き合う真似事のような事はしてみたけれど、それ程好きでもない男性と一緒にいても、感情が揺れる事はなく、手を繋ぐ以上の進展がないまま、お別れをしていた。
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