御曹司くんに再会したら溺愛されました
4月5日 金曜日。
「おはようございます。」
私が出勤すると、課長はもう席について仕事を始めていた。
「おはよう。」
課長は、私を一瞥して挨拶を返したが、その表情からは、何を考えているのか分からない。
私は課長の席に近づいた。
「課長、今日、お時間をいただけませんか?」
課長が顔を上げる。
周りにはまだ誰もいない。
「帰りに寄る。」
彼は小声でそう答えた。
「分かりました。ありがとうございます。」
私は頭を下げて自席に戻った。
しばらくして、
「おはようございます!」
と元気な声が響く。
晴生くんが、私の隣の席に座り、にっこりと微笑む。
「昨日は、いろいろ出すぎた事を言って、
すみませんでした。
里奈さん、ちゃんと眠れましたか?」
少し心配そうに私の顔を覗き込む。
「ううん。ありがとう。
私なりに、がんばってみるね。」
そう言うと、
「里奈さん、やっぱり笑った方がかわいい
ですね。」
と晴生くんがさらっと言うものだから、困ってしまう。
「ふふっ
里奈さん、耳まで赤いですよ。
かわいい。」
まだ、周りはほとんど出勤していないとはいえ、会社でかわいいを連呼するのは反則だと思う。
私はかわいいと言われる歳はもう通り過ぎているのに。