御曹司くんに再会したら溺愛されました
公園の中を歩くと、確かに枝垂れ桜が見頃を迎えていた。
ソメイヨシノより色の濃い桜が、柳のように垂れ下がり、とても綺麗だった。
レジャーシートもお弁当もない花見。
私たちは、公園のベンチに座った。
「できれば、ここで里奈さんのお弁当
食べたかったなぁ。」
晴生くんがとても残念そうに言う。
「ふふっ
私の料理なんて、そんな大したものじゃ
ないよ。」
「ねぇ、里奈さん。
里奈さんは、なんで先生にならなかったの?
里奈さんなら、すごくいい先生になると
思ってたけど。」
晴生くんは、私の目をまっすぐ見て話す。
「んー、正直に言うとね、もともと、先生に
なるつもりはなかったの。
就職に失敗した時の保険のつもりで教員免許
取りたかっただけで。」
晴生くんは、驚いた目で私を見る。
「じゃあ、小売業やりたかったの?」
「ううん。
業種は何でもよくて、情報処理を
やりたかったの。
私、情報処理学科出てるから。」
「そうなの?
あれ?
でも、数学の先生だったよね?」
「うん。
知らない人も多いんだけど、情報処理って、
数学の教員免許取れるんだ。」
「そうなんだ。
知らなかった。」
「ふふっ
普通は知らないよ。
私だって、大学入るまで、知らなかったもん。
実を言うとね、私、数学、苦手なの。」
「え!?」
「ふふふっ
数学の先生にならなくて、正解よね?」
晴生くんが目を丸くしている。
晴生くんは、とても表情が豊かだ。