ず っ と 。




「蒼介」


医局でパソコンとにらめっこしてると聞き慣れた声で名前を呼ばれた


「おお、佑真」


「おつかれ。初花ちゃんのことでちょっと話したいんだけど、今いい?」


「もちろん」



すでに業務を終え私服姿の佑真と一緒に休憩がてら院内カフェに向かう




「で、どうだった?」


「うーん、あまり踏み込んだところまでは話してないし本人も聞かれたくなさそうな感じだからこれからも無理に聞こうとは思わないけど」


「うん」


「虐待を受けてきた子達って、何か特有の雰囲気があるんだ。なんだろう、言葉で表現するのは難しいんだけど…とにかく、俺にはその雰囲気を初花ちゃんからも感じた。

今日聞いた感じだと学校に通ったり仕事をしている感じはないみたい。いつも何してるかも答えたくなさそうだった。

まあ、まだ初日だしなんとも言えないけど、日常的な虐待は十分に考えられると思う」


「そうか……このまま熱が下がって特に異常がなければ3日後には退院の予定なんだけど…」


「本人の希望がない限りはこちら側が勝手に動くことは出来ないからね。辛いけど、何も出来ないのが現実」


「そうだよな……」


「とりあえず、初花ちゃんが入院中は俺もできる限りの事はするよ」


「ありがとうな。今忙しいのに受け持ち増やしちゃって申し訳ない」



別に忙しくないよとヘラヘラ笑って温くなったコーヒーを飲み干した佑真


「じゃ、俺帰るね」


ヒラヒラと手を振って去ってく佑真を見て、こいつ特有のこの柔らかい雰囲気がきっと患者からの信頼を集めるんだろうなとつくづく思った



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