ず っ と 。



初花ちゃんに限界が来たのはその日の夕方頃だった


「先生、お帰りのところすみません。初花ちゃんが…」



いつもより早めの退勤ですでに私服に着替えていたところをナースに呼び止められた



「どうした?」



着ていたカーディガンを脱いで小走りで病室に向かいながら状況を聞く


病室にはナースが1人、蹲る初花ちゃんの背中をさすっている


「どんな感じ?」


「10分前頃から過呼吸で」



肩を上下にして荒い呼吸を繰り返す初花ちゃん



「初花ちゃん、どこか痛い?」


そう聞くと小さく首を横に振る



「苦しいだけかな」


頷く初花ちゃんを見て聴診器を当てる



相変わらず喘鳴は聞こえるがいつもより酷いということも無い



「俺代わるね」


あまり人がいると不安にさせてしまうので、ナースには退室してもらい、背中を擦りながら横に腰掛ける



「ちょっとずつ楽になるから大丈夫だよ、息吐くことに集中してみようか」


「で、きなッ」


「大丈夫、ね、ゆっくり」



その後20分で正常な呼吸に戻り、朦朧としていた意識も徐々に回復してきた



「急に苦しくなっちゃった?」


「…ごめんなさい」


「謝ることじゃないよ。怖かったね」



抜けてしまっていた点滴の針を刺し直して、ふと初花ちゃんの顔を見ると、目いっぱいに涙を溜めていた



「あれ、点滴痛かった?」


「せんせ…」


「ん?」




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