神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?
*★*―――――*★*

「な、なんで大河が迎えに来てるの!?」


玄関先に大河がいる。


“明日、迎えに行くから”


昨日、別れ際にそんなことを言っていたけど、断ったはず。


「大丈夫、ちゃんと連れて行くから、おばさん仕事でしょ?先、出ていいよ」

「ありがとうね、大河君。じゃあ、梨佳のことお願いね」

「お母さん、やめて!大河に頼んだりしないで!」


入学してしばらくは母親が学校の送迎をしてくれていたけれど、
今週からは電車を使って一人で登校している。

その時も、大河は家まで迎えに来ると言ってきかなかった。

大体、大河のほうが梨佳の家より学校に近い。

わざわざ迎えに来てもらわなくても学校くらい行けるからと、本気で梨佳が嫌がったので、
しぶしぶ学校の最寄駅で待ち合わせることになっていた。

お互いの姿を遠目に確認して、そこから別々に学校まで向かう。

そういう約束だったのに……


「大河…、私、本当に一人で行けるから、お願い、先に行ってて」

「待ってるから、早くしな」

「一緒になんか、絶対に行かない!」

「じゃあ、俺も行かない」

「大河、無遅刻無欠席でしょ?それを…、昨日だって早退なんかして、ダメじゃん、やめてよ…」


――これ以上、大河に迷惑なんかかけたくない。


そんな梨佳の考えなど、大河はお見通しだ。

そして、どうすれば梨佳が折れるのかもわかっている。


「ここでごねられるほうが、迷惑なんだけど」

「……ズルい…大河…」


梨佳もわかっている。

大河は絶対に梨佳を置いて一人では行かない。


“梨佳は大河の言うことだけはきく”


その通りなのだ。

このやさしい幼なじみの手を、梨佳は決して振りほどけない。
そう知っていて、周りは大河を利用する。

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