神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?
当然の事実を突きつけられて、梨佳は目の前が真っ暗になるような気がした。
硬く唇を噛みしめ、うつむき立ち尽くす。
そんな梨佳の感情を逆なでするように、楽しそうな大河の声が降ってきた。
「あのさ、梨佳、まだ今の時間ならそんなに学生多くないと思うけど、これ以上遅くなるとモロに登校時間だからな?一応、気を使ってるつもりなんだけど、わかってる?」
「……え!!」
顔を上げると、すでに大河はあさってのほうを向いて知らん顔だ。
梨佳は大河をにらみ付けると、慌てて部屋に戻り、準備をする。
再び玄関まで戻ってくると、大河はさっきと同じ姿勢のまま、壁に背中を預けて立っていた。
梨佳に気付くと、一言、
「遅せえ…」
そう言って、いたずら気に笑う。
少し長めの濃い茶色の髪が、朝日に透けてキラキラ揺れている。
初めて会った時と同じ。
太陽みたいな男の子。
子どもの頃から、ずっと特別で、ずっと大切なひと。
心の奥底に必死の思いで沈めこんだ、昨夜のキスを思い出しそうになって、
梨佳は気を引き締め直す。
そう、梨佳も本当はわかっている。
その手を振りほどけないのは、大河の優しさのせいじゃない。
大河の負担になりたくないと言いながら、この状況に甘んじている。
その告白に、付き合う勇気もないくせに、はっきりと断ることもできない。
結局のところ、梨佳は一人取り残されるのが怖いのだ。
「……ごめんね、大河…」
梨佳は心に広がる暖かさを感じながら、自分の不甲斐なさに唇を噛んだ。