神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?

8時のチャイムが鳴ると、
さっきまで窓から聞こえていた学生の声が消えて、急に廊下が騒がしくなってきた。


「……ねえ、先生」

「…ん?」


少しくせ毛の、柔らかそうな髪。

白衣のポケットに手を突っ込んで、心配げにわたしを見てる。

優しい目。


――ああ、“先生”だ。

――大河じゃない……


「…大好き」

「あのね、何度も言うようだけど、先生は女子高生とそおいうことをしちゃいけないの!ふざけてないで、早く教室に戻んなさいっ」

「ちぇ~、つまんないの~!」


わたしは、くるりと方向転換する。

生物室から出ようと、扉に手をかけたところで、

低い、唸るような声が耳に飛び込んできた。


「凪紗、そのアザ…、どおしたんだ?」


わたしは反射的にスカートを押さえる。
立ち上がった時に、太ももにできたアザに気付かれてしまった。


――アザ?…なんで?

「……え?…なに?」


わたしが呟く。


「…?…なに…って、俺が聞いてるんだよ、どおした?」

「ねえ、先生、なんだか、誰かに見られてる気がしない?」

「……っ!ちょ…、おい朝からやめろ!怖いだろ!」

「あははっ!」


変なの、わたしを助けてくれた時は、先生ってば、あんなにカッコよかったのに。
お化けが怖いなんて、おかしいの。

このまま、変に追及されるまえに部屋を出ようとして、
でも、やっぱりこの違和感が気になった。


「先生、わたし、なんて名前だっけ?」

「凪紗?」

「……凪紗…なに?」


――凪紗凜子(ナギサリンコ)……

――わたしの、名前……


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