神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?

ぼんやりとした意識の中で、梨佳は見慣れない天井を見つめた。

規則的な音がかすかに聞こえる。

ガタン…ゴトン…

夢と現の境界で、一瞬だけ、混乱した。


――先生…?

「…大河……」


声に反応して、視線だけを梨佳に移すと、大河は安心させるように笑う。


「もうすぐ駅着くけど、梨佳…立てる?駅員呼ぼうか?」


大河は梨佳の上半身を少し起こすようにして、包み込むように抱き支えている。
右手が梨佳の手首に軽く触れている。


「……も、大丈夫。次の駅で降りなくても…、このまま帰る」

「…ん、わかった」


そう、答える大河を見つめながら、梨佳は再び瞳を閉じる。
大河に体を預ける。

伝わってくる体温に、安堵する。
電車内の、興味本位の視線も気にならない。
だって、梨佳は知っている。

天井が見えたのは、呼吸を楽にするために、梨佳の気道を確保したため。
苦しそうだからと横にしてしまうと、心臓への血流が増加して心負荷がかかるから、上半身は軽く起して、右手で脈拍を触知する。

こんな緊急対応を、こともなげに出来るようにしてしまったのは、やはり自分のせいなのだ。

――それなのに……

ポロポロと、涙があふれでてきて止まらない。

――夢の中の自分は、別の人に恋をしている。

なんてひどい、裏切り…

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