神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?
3章 君に嘘つき
梨佳はベッドから、のそり…と、重い体を起こすと、部屋を見渡した。
今日は朝から雨だ。
夢の中の世界は、抜けるような青い空だった。
梨佳はそのギャップに、しばらく窓の外に視線を固定したまま動けない。
今朝は、先生の家に押しかけた日の夢をみた。
バス通りから外れた、駅から30分も歩かなくちゃいけない古いアパート。
キッチン、リビングと、もう一部屋。
寝室かと思って、凪紗が開けてみると、ものすごく涼しくて……
部屋には、知らない虫の標本がいっぱい積んであった。
先生の学生の頃からの研究テーマなのだそうだ。
標本が痛んでしまわないように、夏場はクーラーをつけっぱなしにして、温度と湿度の管理をしているらしい。
リビングでは、先生が扇風機の前を陣取っている。
“バカじゃないの?……”
“ほっとけ…!”
凪紗が笑う。
心臓の記憶は、何度も何度も、梨佳の夢を通して蘇る。
梨佳は両手で顔を覆い、うつむいた。
その、ひどい幸福感と罪悪感に、指の隙間から涙が零れる。
もうすぐ、大河が迎えにくる。
いつものように……