神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?
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「楠原先輩、女の嫉妬は甘く見ないほうがいいですよ?ここはひとつ緩衝材を入れましょう」
一週間前、声をかけてきたのは由紀のほうだった。
つまりは、梨佳への批判を、由紀という第三者を混ぜることで和らげようという提案だ。
そもそも、二人が付き合っていようが、なかろうが、大河のそばにいるだけで、梨佳への誹謗中傷はとんでもないものだった。
そのうち言葉だけでは飽き足らず、行動するバカが必ず出てくる。
毎週、受診ために早退していく姿を、目の当たりにしているクラスメイトはともかく、
事情を知らない輩が、取り返しのつかない事をしでかさないとも限らない。
――どうするかな……
ちょうど、大河も危惧していた矢先の申し出だった。
好都合には違いなかったが、大河は正直なところあまり気が進まなかった。
駆け引きなく梨佳の事を心配して持ちかけてきたのか、由紀の目的がわからない。
ただ、大河が望むにしろ望まないにしろ、それから毎日、由紀は駅前で二人を待ち、一緒に登校を始めた。
「あれ?由紀ちゃん、おはよう、どおしたの?自転車じゃなかった?」
「それがさぁ~、聞いてよ、盗まれちゃってさ、しばらくは電車通学だよ。たった一駅なのにさあ~、おはようございます。え…と、楠原先輩」
梨佳に、本来の目的がばれないように嘘をつく。
「……おはよう、山峰さん」
「しばらく、ご一緒させてくださいね。梨佳ちゃんも、いい?ありがとね」
大河に有無を言わせない強行突破だ。
けれどもその結果、やっかみの対象は確実に梨佳から由紀に移った。
「なに?あの女、友達だからって、何様?空気読めよ」
「少しぐらいは遠慮すればいいのに、自分が邪魔だってわかんないかなぁ」
「あの、梨佳って子もなんか言えばいいのに、おとなしそうだもんね、かわいそうに」
梨佳には同情票まで集まりだして、効果は上々といったところだ。