神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?
「梨佳ちゃん、高校生活はどう?もう慣れた?友達はできたのかな?意地悪なんかされてない?…ほら、何か困ったことがあったら言うんだよ?先生が学校にちゃぁんと話しに行くからね!」
高橋から矢継ぎ早に繰り出される質問に、大河が呆れたように口を挿む。
「さっさと診察しろよ、先生」
「うるさいな、大河は。してるだろ診察っ」
「そおいうのは、世間話っていうんだよ」
「あはは」
相変わらずの二人のやり取りを見ながら、梨佳が笑う。
大河は少しだけ表情を緩めると、
当たり前のように診察室の奥まで歩き、窓際の壁にもたれかかった。
腕を組み、視線を床に落とし、いつものようにゆっくりと目を閉じる。
その様子を確認すると、梨佳も診察室の椅子にちょこんと腰をかけ、ブラウスのボタンを外し始めた。
――7年?…いや、8年か…
その年月を想い、高橋も目を伏せる。
まぶたの裏に、初めて二人を見たときの光景が焼きついている。
長期入院を余儀なくされた、重い心臓病の女の子と、
そのそばに立つ、病院には不釣合いな健康そうな男の子。
高校の制服が、まだ大人の庇護下であることを示してはいるけれど、
もう子供とはいいがたい男女の姿。
それでも、なお繰り返される、子供のころからの変わらぬ光景を、再び開いた高橋の目がとらえると、
彼は眩いものを見るかのように、目を細めて微笑んだ。