神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?
「伊藤さん…、仕事あるんじゃね?早く行きなよ」
「いいじゃん~、お姉さんも仲間に入れてよぅ…、って何!?あんた達、勉強なんかしてんの?…えぇ~~…」
「“え~”って、何でぇ?変かなぁ…」
「なんか、もうちょっと青春っぽいイベントとかしてよう…、クリスマスも終わったってのに進展ないしさぁ~、告白とかキスとかさぁ~」
梨佳の顔が見る間に紅潮していく。
「どっか行けよっ!」
「え~つまんない~」
人と一定の距離をおこうとする梨佳と大河のことなどお構いなしに、加奈子がズカズカと2人のパーソナルスペースを侵しまくる。
真実、邪魔にならない程度だったかはともかく、加奈子の真っ直ぐな性格と裏表のない態度は、信頼を勝ち取り、
加奈子にとっても、梨佳と大河にとっても、お互いが特別な存在になっていった。
夕方、大河と一緒にいる梨佳の姿を見た日には、なんだか得した気分にすらなる。
喜んだり、怒ったり、拗ねてみたり……
そして、いつもとは比較にならないほど輝くような笑顔を、梨佳は大河に見せる。
こんなにも感情豊かな子だったのかと、加奈子はその日が来るごとに驚かされた。
――悪い魔法使いに呪いをかけられたお姫さまみたい…
以外にもロマンチストな加奈子は、そんなことを思ったりする。
梨佳は普段は人形で、大河と会っているときだけ人間に戻ることが出来るのだ。
いつの日か、王子様と2人手を取り合って、この白い巨塔から笑って出て行ければいいと、心から願った。
しかし、その数ヶ月後、2人の姿をデイルームで見かけることは出来なくなる。
梨佳の安静度が変わった。
“車椅子での病院内フリー”から“ベッド上安静”へ。
不整脈、ことにVPCの連発が止まらない。
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VPC(心室性期外収縮):本来の洞結節からの興奮より早く、心室側で興奮が開始する。単発ならばまずは心配はないが、多形性(VPCの形がいろいろ)、2連発、3連初発では心停止へと移行の恐れがある。
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