神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?
「また来る、梨佳」
「……さよなら、大河」
それは、2人が分かれる際に、ずっと繰り返されてきた言葉。
“さよなら”は、他の友達たちと同様に、いつか大河が来なくなることへの、覚悟だったのか。
それとも、いつか自分がいなくなることへの、覚悟だったのか。
梨佳は、決して“またね”と言ったことはなかった。
“またね”は明日へと続く未来への言葉。
かたくなに未来を信じようとしない梨佳の代わりに、大河が梨佳の手をとり、ほどけないように握り締める。
大河の“またね”はつづく。
梨佳にも未来が訪れることを証明するかのように、その後も大河は梨佳に会いに来続けた。
大河は未来。
加奈子が記憶しているなかで、梨佳が“また”と、言ったのはたった1回だけだ。
「……また…ね、大河……」
大河の肩が、ほんの少しだけ揺れて、すぐさま答えた。
「…うん…またね、梨佳……」
心臓移植が決まった日。
雪の舞う、美しい2月の午後だった。
手術室へ続く直前の廊下。
梨佳の冷たい手を、大河はどんな気持ちで握っていたのだろう…
梨佳が微笑む。
大河を安心させるように、幸せそうに笑う。
本気で“またね”を信じていたのかどうか、梨佳にしかわからないけれど、
その笑顔を、加奈子はきっと生涯忘れないと思った。
だから……
「梨佳…ちゃん…?」
目の前にいる、この女の子を見て、
やはり、見間違いなんかじゃかったと、加奈子は確信するのだ。