神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?

「心音もいいね。エコーも心電図も異常なし。写真は~…」


マウスをカチカチ操作して、医者らしくパソコンに映し出された胸部レントゲン写真を見つめる。


「問題なし」

「ね!大丈夫だったでしょ!大河」


勝ち誇った表情で振り返る梨佳とは対照に、大河の顔は曇ったままだ。

床からおもむろに視線を引き上げると、
眉間にしわを寄せたまま高橋を見つめること、数秒……、


「…ん~、じゃっ、じゃぁさ、念のためホルターもとっとくかぁ~」

「ええ~~っ!」


あっけなく覆った主治医の見解に、
梨佳は見るからに不満そうに、そして呆れ気味に言った。


「しっかりしてよぅ!主治医は大河じゃなくて先生でしょ?」

「いや、だって、ほら大河が……、でも、もう一度聞くけど、本当に最近変わったことはないんだね?」

「……ぅ、うん?」


一瞬言葉に詰まった梨佳を見て、
笑顔は崩さないまま、高橋の目の奥に厳しさが光る。


「梨佳ちゃん?」

――前門の先生(虎)に、

「ちゃんと言えよ、梨佳」

――後門の大河(狼)。


梨佳は心の中でそう呟くと、
これは観念したほうがよさそうだと、しぶしぶながらに白状した。


「はあっ、少し…寝不足なだけだよぉ」

「少しじゃないだろ。毎日2~3時間しか寝てないっておばさん心配してたぞ」

――……お母さんめぇ、やっぱり大河に泣きついたのね

ボソリ、心の中で呟き、
あからさまにムッとしてみせる。

大河にじゃない。
母親と、目の前に座る主治医に向かってだ。

――先生も、どうせ最初っから検査するつもりだったくせに……

どうもこの二人は、

“大河の言うことなら、梨佳はきくだろう”

と、考えているフシがある。

*ホルター(ホルター心電図):24時間心電図を記録する検査のこと。機械を装着後、自宅で日常生活を送り、翌日病院ではずす。その間の心電図を記録する。自覚症状や、食事・睡眠などの行動記録も同時に本人に書いてもらい、後に照らし合わせて診断を行う検査のこと

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