一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
どうしようもないほどに切なくて
どうしようもないほどに悲しくて。

いつも颯爽としている石田さんに、まさかそんな過去があったなんて。
人が周りに見せている姿が、その人の全てではないんだ。


立ち上がって、チェストから何かを取り出した石田さんは
それをテーブルの上、私の前に差し出した。

「社長の部屋の鍵よ。」

「え?」

「紗良さんが社長と一緒に過ごすのを楽しんでいるのは一目瞭然だし、
社長はあなたの前では素が出かけてて態度が可笑しい。

いつまでも意地張ってちゃ駄目。
私のように、なっちゃ駄目。」


涙目で懇願するような石田さんに
逆らうことなんてできなかった。

私は何かに操られるように立ち上がって、玄関に向かう。

「社長、落ち込んでる時はヘッドホンで大音量で音楽を聴いているから、
インターフォンなんか気づかないわ。」
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