一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
送信ボタンを押した直後に鳴り響く、メールの着信音。
このタイミングはまさか…

受信ボックスを開くと、タイトルが英文のメール。

「user unknown…。」

メールアドレスを間違えて入力してしまった時や、アド変した人に送った時に戻ってくるメールだ。
何度かメールのやり取りをしているので、間違っているなんてことはあり得ない。

タイミング悪く、アド変した直後に送ってしまったのだろうか。
待っていればそのうち、アドレス変更したので登録お願いします、なんてメールがくるかなぁ期待を抱いても一向に何の音沙汰もない。

2日後悩んで、勇気を振り絞ってかけた電話は
数回のコール音の後、
”おかけになった電話番号は、現在使われておりません。”



この時の感情がどうだったのか、今でも整理がついていない。

悲しみ。
喪失感。
怒り。

多くの感情が混ざりすぎてぐちゃぐちゃだった。
それでも最初の衝撃が過ぎ去ると、後に残ったのは妙にすっきりとした吹っ切れだった。
1か月間もやもやしていた状況に、やっと区切りがついた。

そもそも住む世界が違う。
初恋は実らない、とよく聞く。
受験勉強にも本腰を入れないと。

気を紛らわせる為の言い訳はたくさんあった。

それでも、アドレス帳から彼の名前を消せないのは、
大切な思い出として残しておきたかったから。

その、大事な思い出の彼が
今私が持つ本の表紙の中にいる。
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