一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
壁際に追い詰められて、彼の右手は壁に伸ばされ、
彼の左手側、つまり私の右手側は
お互いの腕がくっつきそうな、でもくっつかないギリギリの位置に迫られている。

俗に言う、壁ドンというやつ。

本やマンガで、何度も読んだ。
きゅんきゅんして、絶好調に盛り上がるシーン。
身分不相応ながら、そんなシーンに憧れちゃったりもしたてけど。

これは、現実?


オールバックにセットされたやや長めの髪、
鋭く射るような瞳。
相手に絶対にノーと言わせないような威圧感。

今をときめくイケメン社長、豊沢 彬。
同じ名前の他人なのではないかと思うくらい、私が知る彬くんとは違うことばかり。

そして彼は私のことを紗良と呼んだ。

制服の胸元に着けている名札には苗字しか書かれていない。
彼は私のことを、佐々木紗良だと知っているのだ。
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