一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
「今夜、食事にでも行こう。迎えを寄こすから。」

くらくらと眩暈を感じそうなくらい混乱していて、未だに状況が掴めていないに私に告げる。

今夜、食事、と聞こえてはいるけど、脳が処理できていない。

「あの、待ってください、それはどういう意味で・・・。
私のこと、覚えてるんですか?」

「何を今更・・・。」

一旦離れたはずの彼が、また近づいてきた。

「どうして、わざわざ本まで出して、ここでサイン会を開いたかわかるか?」
「どういうことですか?」
「お前に会うため、だ。」

また強い瞳で射貫かれ、目を逸らす。

「そんな、わざわざ・・・。」

「今の俺たちは住む世界が違いすぎる。
こうでもしないと接点なんて作れない。」

高飛車にも聞こえる言い方に、少しかちんときた。
間違いなく事実なんだけど、こうもはっきり言われると良い気はしない。
おかげで意識がはっきりとしてきた。

「私がここで働いてるって知ってたってことですか!?」

「本名や通ってた学校名を知ってるんだ。
調べることなんて造作も無い。」

確かにそうなんだけど、
そこまでする意味がわからない。
恨みでも買ったんだろうか、私。

「悪いが今は時間がない。今夜、また。」

そう言って、颯爽と従業員用通路に出て行ってしまった。

仕事して、
家に帰って、
家事をして、
読書して、
寝る。
また起きたら
仕事して、と。

休みの日は、仕事の時間を読書に当てるだけで、
やっぱり他の日とは大きな違いはない。

そんな私の日常は
この日から大きく変わることとなった。
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