一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
先付けから順に料理が運ばれてきて、ゆっくりと箸を進めていくものの、居心地の悪さは変わらない。

ぽつりぽつりと会話を交わすものの、社長について、ここまで得られた情報と言えば

・マンションに一人暮らし。プライベート秘書の石田さんも同じマンションに住んでいる。
・猫を飼いたいけれど、出張も多く家を空けることが多いから飼えない。
・洋食より和食派。 
ということ。

核心的な事は分からないまま。
お互いに避けている気さえしてしまう。

どうしてわたしを食事に誘ったのかは、わからないまま。

水菓子、桃のシャーベットが出てくると、
これでやっと終わり、と安堵してしまった。
それが、顔に出てしまったらしい。

「俺との食事は退屈か?」

お酒には強くないのか、少し顔を赤らめた社長が言う。

「いえ、すみませんっ。ちょっと、緊張してしまって・・・・。」

「その言葉遣い。」

「え?」

「そのデスマス言葉。普通に喋ってくれて構わない、俺の前では。」

「そう仰いましても・・・。私と社長では立場が違いますから。」
「お前の社長ではないだろう。」
「それでも、違います。」

ここはハッキリさせておかないと、と社長から視線を逸らさないように頑張る。
そして社長も、私を真っすぐに見つめ返す。

「昔のような関係には戻れないのか?」
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