一途な２人　～強がり彼氏と強情彼女～
せっかくずっと想っていた人に再会できたんだから、難しいことなんて考えずに付き合っちゃえー、というささやきと、
駄目よ、彼とあなたでは住む世界が違うわ。それに彼は昔とは違うもの、なんてささやきがきこえてきそうだ。

どちらが天使で、どちらが悪魔かなんてもう判断できない。

「どうやら嫌われてはいないようだな。」

考えをストップさせて、社長に意識を戻した私の視界に入ったのは、自信満々そうな社長の顔。
相手にはノーとは言わせないような威圧感。
まさに、大企業の社長さんだなと思わせられるオーラ。

さっきの悲しそうな顔は？
交渉を思い通りに進めるための演技なのだろうか？

あっけに取られてしまい言葉を継げない私に、彼はさらに続ける。

「結婚前提というのが負担なら、最初はそこまで重く捉えなくてもいい。
軽い付き合いからでいいから。」

淡々と、そっけない素振りで話す社長に、また怒りが湧いてきた。

「軽い付き合いって何ですか！？
たくさんいるガールフレンドの１人に加えるってことですか！？」

「そうは言ってないだろう。
結婚前提という部分に対して譲歩したまでだ。」

確かに、そうだったかも。

軽い付き合いと言う言葉が、まさに私が不安を抱いていた、もてあそばれる→捨てられる、なんて展開を連想されてしまいイラついてしまったけれど、話の流れ的には社長の言うことの方が正しい。

「ごめんなさい。
混乱している上にお酒も入っているので、冷静な判断ができないんです。」

「構わない。
そろそろ出ようか。明日も仕事だろう？」

まだ決着は付いていない気もするが、あえて蒸し返す必要もない気がして私も口をつぐむ。

社長が店員さんを呼びさらっと会計を済ませ、店を出る。
ごちそうさまでした、と私が言った時にはもう、社長は携帯で誰かに連絡をしようとしているところだった。

「あぁ、頼む。」

一言で電話を終わらせて、私に向き合った。
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