一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
「紗良、今日はありがとう。家まで送るよ。」

11時になろうかとしているところだった。
まだ電車は動いているけれど、素直に甘えることにした。

きっといつもの私だったら断っていたと思う。
でも今は、その気力もないほどに混乱している。

社長と二人、並んでビルの前に立っている。
こうやっていると、図書館からの帰り道、並んで歩いていたことを思い出す。

お互いに無言のまま、気詰まりに感じる前に、先程のプリウスが目の前に止まった。
運転しているのはもちろん石田さん。
近くで待っていてくれたんだろう。

社長がドアを開けてくれ、後部座席に乗り込む。
ドアを閉めた社長は車道側に回り込んで、反対側のドアから後部座席に乗った。

社長が何も言わなくても石田さんは車を発車させる。
きっと私の家の住所も知っているに違いない。
どこまで周到に計画されていたんだろう、この再会劇。

「社長、聞いてもいいですか?」

「何?」

「私と会うために本を出版したって仰っていたのは本当ですか?」

「ああ。」

「未だに納得いかなくて・・・。
サイン会を担当するはずだった同期が、急用で休んでしまって。
私は彼女の代わりに急遽担当しただけです。
なのに、展開が早すぎるというか・・・。」

社長の思うままに進んでいる気がしてならないのだ。

「あぁ、彼女ね。
北海道へ言ってみたいと言っていたから、今頃楽しんでいるんじゃないか?」

「はいぃ!?」
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