一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
豊沢の自宅、と聞いて、
日本家屋の豪邸の姿が頭をよぎったけれど、今は一人暮らしだと言っていたのを思い出した。

「石田さんも、同じマンションに住んでるって聞きましたけど・・・。」
「さようでございます。いつでも駆け付けられるように、豊沢の1つ下の階に住んでおります。」

いつでも駆け付ける、か。
プライベート秘書っていうのが何を意味するのかも正直わからない。
ガールフレンドの送迎以外に何してるんだろう。
秘書ってことは、石田さんも社長の会社の社員てことだと思うんだけど、
異性同士の社員が、同じマンションに住んでるって普通のことなんだろうか。

車は首都高に入り、流れるように進んでいく。
薄暗くなってきている時間だけれど、車のテールランプや道路脇のビルのネオンや街頭で
視界は騒がしい。

行先を聞いてしまうと、それ以外に言葉も浮かんでこなくて、また車内は沈黙のまま進んでいく。

社長が何を考えているのか、そばにいる石田さんなら知ってるのかなと、聞いてみたい衝動に駆られたけれどやめておく。
まだ彼女の素性が良く分からない今、迂闊なことを言って敵に回しても厄介な気がする。
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