一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
「あ、はい、失礼します。」

石田さんが案内してくれたソファーに座る。
皮張りで、硬すぎず柔らかすぎずの絶妙な座り心地。
きっと、うちの家賃の何か月分もするような、海外の高級品だろう。

「それと、先ほど豊沢から連絡がありまして、
少しトラブルがあって戻りが遅くなるそうなの。
夕食をご一緒したい、と言っていたけれど、紗良さんはお腹空いてないかしら?」

そうと聞いた途端、
お約束のように、ぐぅーとお腹が鳴った。

「すっ、すみません・・・。」

恥ずかしくて、顔が熱くなる。

「いいのよ。お仕事の後ですものね。
軽食を用意するから、お待ちください。」

そう言って、キッチンへ向かっていった石田さん。

秘書さんがキッチンに立つんだ。
でも動きは手馴れていて迷いなく、どこに何があるのかも把握しているようだ。
秘書だけではなく、家政婦みたいな仕事もしているのだろうか。

手間をかけて申し訳ないとも思いつつ、何か食べられるのはありがたい。
昨日の夕食でお腹がいっぱいだったので朝は何も食べられず、
だるくてお弁当も作れず(お弁当箱、鞄に入れっぱなしで寝ちゃったし)
お昼もコンビニのサンドイッチで済ませちゃったから
エネルギー不足だったのは事実。

「お待たせしました。」

石田さんが、美味しそうなパウンドケーキとブラックコーヒーが載ったトレイを運んできてくれていた。
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