臆病な背中で恋をした
連れて来てくれたのは、超がつく高級なステーキのお店で。ドラマで見かけた、セレブな大病院の理事でも集まっていそうな。
「ここのは本当に美味いぞ」
目の前の大きな鉄板で、シェフが綺麗な赤身のお肉を芸術的な色目に焼き上げてくれる。
社長と亮ちゃんに挟まれて横並びに座り、一口サイズに切り分けられた最高級の牛フィレを堪能するうち、肩の力も少しずつ抜けて笑顔が出るくらいには、なっていた。
「明里は、付き合ってる男はいないのか」
ワインを口にした真下社長にストレートな物言いで尋ねられた。
「はい。いないです」
「今まで付き合った男は?」
「えぇと、それも・・・いない、です」
「まさかまだ男を知らないってことは、ないだろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
ぎこちなく泳がせた視線が、思わず亮ちゃんとぶつかった。一瞬。揺れたように見えた亮ちゃんの眼差し。
恥ずかしいような気まずいような。変な居たたまれなさに、どうしていいか分からなくなる。
大学の時も、前の会社の時も、デートに誘われたことはあった。付き合って欲しいって告白されて、嬉しくないわけじゃなかったけど。心が動くことはなかった。その理由は、自分でも曖昧な感覚でしか。
でも多分。
亮ちゃんならきっとこうしてくれた、こう言ってくれた。
無意識に重ね合わせて。
違和感でしかなかったのかも知れない。
素直に好きって言える気持ちは、今でも亮ちゃんにしか。他の誰かをそう思うことって・・・わたしには無いって。いま分かった気がした。
「ここのは本当に美味いぞ」
目の前の大きな鉄板で、シェフが綺麗な赤身のお肉を芸術的な色目に焼き上げてくれる。
社長と亮ちゃんに挟まれて横並びに座り、一口サイズに切り分けられた最高級の牛フィレを堪能するうち、肩の力も少しずつ抜けて笑顔が出るくらいには、なっていた。
「明里は、付き合ってる男はいないのか」
ワインを口にした真下社長にストレートな物言いで尋ねられた。
「はい。いないです」
「今まで付き合った男は?」
「えぇと、それも・・・いない、です」
「まさかまだ男を知らないってことは、ないだろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
ぎこちなく泳がせた視線が、思わず亮ちゃんとぶつかった。一瞬。揺れたように見えた亮ちゃんの眼差し。
恥ずかしいような気まずいような。変な居たたまれなさに、どうしていいか分からなくなる。
大学の時も、前の会社の時も、デートに誘われたことはあった。付き合って欲しいって告白されて、嬉しくないわけじゃなかったけど。心が動くことはなかった。その理由は、自分でも曖昧な感覚でしか。
でも多分。
亮ちゃんならきっとこうしてくれた、こう言ってくれた。
無意識に重ね合わせて。
違和感でしかなかったのかも知れない。
素直に好きって言える気持ちは、今でも亮ちゃんにしか。他の誰かをそう思うことって・・・わたしには無いって。いま分かった気がした。